自社のCF:キャッシュフロー計算書⑥
これまでみてきたキャッシュフロー計算書の概要も今回で最後です。
これまでの記事を読んできたかたは、結局このキャッシュフロー計算書で わかるのは、資金の流れしかないのかと思っているかもしれません。
しかし、お金の流れだけではなく、 会社が絶好調か、普通か、危険かもある程度、わかります。
それは、血液の流れから体調の良し悪しが決まるようなものです。 試しにキャッシュフロー計算書のサンプルを用意しました。 このサンプルのうち、自社の営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、 財務キャッシュフローのそれぞれがプラスか、マイナスかを選択してください。 これまでのシリーズのキャッシュフロー計算書のテンプレートや、 決算書の分析について書かれた本、または、会計事務所等につくってもらった キャッシュフロー計算書その他の財務諸表をもとに、一度、それぞれ プラスかマイナスかを埋めてみてください。
自社のキャッシュフロー計算書サンプル
埋まりましたでしょうか?
絶好調の会社のキャッシュフロー計算書は、こうなります。
絶好調のサンプル
営業キャッシュフローがプラスということは、本業でうまくいっていることを意味します。 これに対し、投資キャッシュフローがマイナスということは、設備投資が積極的に 行われていることなどを意味し、絶好調を裏付けます。さらに財務キャッシュフローも マイナスだと、借入金の返済もどんどん行われ、資金繰りが楽になっていること等が想定 されます。
次に普通の会社のキャッシュフロー計算書は、以下のようになります。
普通のサンプル
営業キャッシュフローがプラスという点は、絶好調かもしれませんが、 財務キャッシュフローがプラスということは、借入による資金の増加が考えられます。 本業はうまくいっているものの、投資キャッシュフローがマイナスであることから、 設備投資のために借入をしている可能性があり、投資資金の回収は、これからの営業活動 にかかっていることが推測されます。これからが勝負、といったキャッシュフローです。
最後に危険な会社のキャッシュフロー計算書は、以下のようになります。
危険のサンプル
営業キャッシュフローがマイナスの場合、人件費の払い過ぎの可能性も検討すべきです。 慢性的な資金不足のため、財務キャッシュフローがプラスとなり、それだけでは、 手の施しようがないことから、固定資産を売却したり、保険を取り崩したりして、 投資キャッシュフローまでもプラスになっています。
「おわりに」
以上、全六回にわたり、エクセルで作った様々なテンプレートや財務諸表のサンプルを見て きました。 この六回のシリーズは、資金繰りが苦しいがどこからどう手を打ったらいいかわからない 事業者のかたが、資金繰りの構造を分析し、どこがまずかを自覚してもらうことを狙いと していますので、なるべく手を動かしてもらうことを意識し、問題形式を取り入れました。 単にキャッシュフロー計算書の読み方を解説するものではなく、自社の資金繰りの問題点 を整理し、改善に向けて前進してほしいと考えたためです。
「どこかの森に迷い込んだ旅人たちは、あちらへ向かったり、こちらへ向かったりして 迷い歩くべきではなく、いわんやまた一つの場所にとどまっているべきでもなく、 つねに同じ方向に、できる限りまっすぐに歩むべきである。(略)というのは、旅人たちは 彼らの望むちょうとその場所に行けなくても、少なくとも最後にはどこかにたどり着き、 それはおそらくは森の真ん中よりもよい場所であろうからである。」
資金繰りも改善に向けて、努力をし、まっすぐに歩んでいけば、2億の借金も15年で 完済した方もいます。ゆっくりでも確実に前に進んでゆけば、進歩があることをデカルトも 言いたかったと思います。これらのサンプルが、これから前進しようとするかたの資金繰り の流れを解明する手助けになれば幸いです。